イノベーションへの解 実践編

この週末に読んだ3冊のうちの1冊。
イノベーションのジレンマ」等の、破壊的イノベーション(disruptive innovation)に関する理論で有名な、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が創設した、イノベーションコンサルティングと投資業務を提供するコンサルティング・ファーム「イノサイト」のメンバーが中心となって執筆した、実際に破壊的イノベーションを自ら創造するための、実践的な解決策を提示した本。

イノベーションへの解 実践編 (Harvard business school press)

イノベーションへの解 実践編 (Harvard business school press)

  • 作者: スコット・アンソニー,マーク・ジョンソン,ジョセフ・シンフィールド,エリザベス・アルトマン,クレイトン・クリステンセン,栗原潔
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2008/09/19
  • メディア: 単行本
  • 購入: 5人 クリック: 39回
  • この商品を含むブログ (14件) を見る


内容は、自ら破壊的イノベーターになりたいと思う者にとっては、極めて興味深く読めることだろう。ただし、「破壊的イノベーション」の概念自体がわかっていないと、この内容の深さがよく理解できないかもしれないので、基礎知識として、まず「イノベーションのジレンマ」と「イノベーションへの解」を読んだ上で、この本に入ることをお薦めする。
(私は、「イノベーションへの解」は、邦訳ではなく原書"The Innovator's Solution: Creating and Sustaining Successful Growth"の方を読んだのだが)

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press)

イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press)


イノベーションのジレンマ」は、顧客の意見に熱心に耳を傾け、新技術への投資を積極的に行い、常に高品質の製品やサービスを提供している業界トップの優良企業が、その優れた経営のために失敗を招き、トップの地位を失ってしまう――というジレンマを解き明かした名著だが、では、それに対して、自らが破壊される側でなく破壊する側に立つためにはどうしたらよいかについての指針を示したのが「イノベーションへの解」である。
それに対し、本著は、さらに、破壊的イノベーションを自ら産み出すための、極めて実践的なマニュアル的内容となっている。内容は、上記の2冊を読んでいれば極めてわかりやすく(ただし、独特の用語表現がある(例えば、「用事(job)」、「非消費(nonconsumption)」、「過剰満足(overshooting)」など)ので、できれば「イノベーションへの解」は原書の方を読んでおいた方が概念が理解しやすいかもしれない)、この本を読むと、この本の内容を参考にして、自ら破壊的イノベーションを実践したいという気分がかきたてられる。
絶えざる自己革新の必要性を再認識させられるとともに、すべての日本企業経営者に読んでもらいたい書である。


なお、クレイトン・クリステンセン教授自身は、自身のホームページによれば、現在は破壊的イノベーションの視点を教育やヘルスケアなどの社会的問題に当てているそうであり、今後の研究成果も期待されるところである。