パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本

居心地のいい日本に閉じこもっていく日本人・日本企業について述べた論考。
私自身としては、そんな日本に危機感を感じているが、著者は、日本と日本人に対する愛情のせいか、そんな日本の現実を描きつつも、暗くなりすぎず、未来への希望をも提示している。

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)


基本的には、日本の居心地のよさとは、自国市場が大きく、経済的にまだそこそこの豊かさを保っていること、雇用がまだ十分流動化していないことから来ていると考えられるが、逆に言えば、居心地のよさを感じられるのは、衆目の一致しないようなリスクのあることには取り組まないこと、既得権益を抱えた人たちのそれが維持されていること、などから来ているとも考えられる。
こうした現状を打開するためには、従来どおりの決まったやり方だけでなく、リスクを冒して試行錯誤で方向を探しながら進む生き方をとる人が増えること、自分と意見や利害が対立する人たちの存在する多様性を尊重すること、日本だけでなく世界に目を向ける人が増えること、などが必要だと思われる。
ただ、私自身もそのように意識して取り組み始めているが、逆に裏から刺されたりすることもあり、なかなか一筋縄ではいかず、労力の多い課題である。
気軽に読める一方で、今後の日本の課題について考えさせてくれる一冊であったが、やや楽観的に過ぎる印象があるのが気にかかる一冊であった。ともあれ、本の内容はともかく、「パラダイス鎖国」というフレーズは的確であり、この日本の現状にもっと危機感を感じる必要があるだろう。