座右のニーチェ−突破力が身につく本

斎藤孝氏の、「座右のニーチェ−突破力が身につく本」を読んでみた。

座右のニーチェ (光文社新書)

座右のニーチェ (光文社新書)


本書は、ニーチェの著作のうち、主に「ツァラトゥストラ」から、ニーチェの名言を、斎藤氏の私見も交えて、紹介した書である。

ツァラトゥストラ (中公文庫)

ツァラトゥストラ (中公文庫)


ニーチェの不朽の名作「ツァラトゥストラ」は、初めて哲学・ニーチェに触れる人には、きっと難解に思われるだろう(私は、高校時代・大学時代と二度通読したが、何度も挫折しそうになった)。
しかし、この本は、ニーチェの名言のおいしいところをわかりやすく紹介していて、忙しいビジネスパーソンにも、ニーチェの哲学・思想が、常識を超えようとする現状打破型の変革リーダーにとって、こんなにもためになるものだったのか!と感じさせてくれる書であろう。
私は、個人的には、斎藤孝氏の著作は、実を言うとあまり好きではないが、本書に関しては、電車の中でもニーチェの深遠かつ有用な思想に簡単に触れることができる、といった意味で、初めてニーチェ哲学に触れるビジネスリーダー(及びその予備軍)には、入門書・解説書としてお薦めできる。


ただし、本書だけでは、ニーチェの「ツァラトゥストラ」自体の、文学的・詩的な美しさと、ニーチェ哲学の深遠さ(キリスト教世界で「神は死んだ」後の、現代の「聖書」に匹敵する書とさえ言えるかもしれない)に迫ることはできないし、本書の副題にあるように「突破力が身につく本」ではない。ニーチェ哲学そのものを知ることで突破力が身につくことはあっても、本書のような軽い本だけでは、本当に「突破力が身につく」かは疑問である。あくまで入門書である。著者か編集者の売らんかな主義を感じさせる副題である。


なので、本書でニーチェ哲学に目覚めた反常識型のビジネスリーダーの方々には、ニーチェ自身の著作「ツァラトゥストラ」そのものを、夏休みや冬休みなどの課題図書として読むことをお薦めする。
私も、近いうちに「ツァラトゥストラ」を再読し、反常識型の変革リーダー・アントレプレナーとしてのあり方・生き方を考えてみたい。