人生越境ゲーム/私の履歴書

比較制度分析(Comparative Institutional Analysis)という、社会科学の新しい学問領域を切り開いた、スタンフォード大学名誉教授の青木昌彦氏がこれまでの人生について述べた著作「人生越境ゲーム(私の履歴書)」を読みました。

人生越境ゲーム―私の履歴書

人生越境ゲーム―私の履歴書


本書は、昨年の10月に、日本経済新聞の「私の履歴書」の欄に、一ヶ月にわたって掲載された、青木氏の連載を、二倍余りに拡張したものに加え、同氏による書評やこれまでの新聞・雑誌への連載記事などをまとめた、充実した内容で、「私の履歴書」の連載当時から、評判となっていたようですが、既に新聞でお読みになられた方にも、お薦めです。
私は、連載当時、気にはなっていつつも、ついつい読み逃した回が多く、気になっていたので、今回の本書の出版は、私にとっては非常に嬉しいものでした。

私は、青木先生とは、先生がスタンフォード大学教授時代に来日して、東京大学で比較制度分析について、およそ三か月余りの間、講義をする機会があった際、履修登録もしてなかったのに講義にもぐりこんで、毎週授業を聴講していた、という縁があるのですが、大学時代に受けた授業の中では、間違いなく、最も面白く知的刺激に富んだ授業の一つでありました。
そのおかげで、一度は経済学の大学院に入り直そうか考えたほどです。

先生の授業を受けた後も、比較制度分析に対する興味は覚めやらず、当時一生懸命書いた卒論にも、先生の授業から得た示唆を盛り込んだり、先生の比較制度分析に関するその後の著作を読んでは、比較制度分析に関する関心を深めたものでした。


当時読んだ本

経済システムの比較制度分析

経済システムの比較制度分析


それはさておき、本書「人生越境ゲーム(私の履歴書)」は、その青木先生のこれまでの人生遍歴を述べたものですが、今回、これを一気にまとめて読んでみて、これだけのご高名な学者の方が、これだけの波瀾万丈の人生を過ごされてきたことに、改めて、正直驚きを感じずにはいられません。

特に、最初の1/3ほどもの部分が、先生の学生運動を過ごされていた時代に費やされていることが、驚きであり、かつ、本書の中でも最も面白い部分です。
熱く知的な闘争を過ごされてきた先生の学生時代に、改めて感銘を受けるとともに、先生の知的な営為は、その時代からずっと繰り返されて来たものであることにも、深い感銘を受けました。

本書にはほかにも、先生の知的な、学問領域あるいは組織の壁を越えた(越境した)、学問的あるいは社会的チャレンジが数多く述べられており、改めて青木先生に対する尊敬の念を感じずにはいられません。
本書を読んで、改めて、私も及ばずながら、もっと知的に成長しなくては、と改めて考えさせられた次第です。