伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日

7月の三連休に山形に行く用事ができたので、ついでに、山形県で日本の伝統を探る旅に出ることにしました。

行き先は、まず仙台にいる友人と会ってから、山形に向かい、用事を済ませた後、松尾芭蕉が「おくのほそ道」にある有名な「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」の句を詠んだ、山寺を訪れ、さらに、NHK朝の連続ドラマ「おしん」の舞台となった、大正時代を彷彿させる木造建築の立ち並ぶ温泉街があるという、銀山温泉を訪れることにしました。
仕事の息抜きとして、日本の歴史と伝統にひたるということで、今から楽しみです。

そんな訳で、せっかく山形で日本の伝統を探ることにしたので、山形で、新たな「カロッツェリア(※)」的なものづくりによる地場産業の再生を目指す「山形カロッツェリア研究会」を主宰しており(参考)、米国のGM、ドイツのポルシェ、イタリアのピニンファリーナでカーデザイナーとして働いたこともあり、フェラーリなどのデザインも手掛けた、世界的なカーデザイナーであり工業デザイナーでもある、奥山清行氏の著作「伝統の逆襲−日本の技が世界ブランドになる日」を読んでみました。
(※カロッツェリア:イタリア語で(車の)ボディ工房の意味。北イタリアでは部品・素材調達からデザイン開発、組立まで地域一体となって推進する伝統的な生産方式。あのフェラーリも多くのカロッツェリアによって産み出されている。)
(本当は、山形では、山形カロッツェリア研究会発のブランドである、「山形工房」ブランドの作品の展示なども見てみたかったのですが、いろいろな所に問い合わせても、現時点では日本ではまだそのような展示はしていないとのことでした。。。)


伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日

伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日


ともあれ、本書は、世界で活躍されておられるプロフェッショナルな方による、グローバルな視点からの、日本の伝統を活かした「日本のものづくりと地場産業」の再生論、ということで、読んでいてとても興味深かったです。
(興味深い記述のあるページを折っていったら、かなりのページを折ってしまいました。)

文章は平易ながらも内容は濃く、日本のものづくりについて様々な課題が述べられており、なかなか一言では内容を要約しがたいのですが、私なりに簡単に要約すれば、韓国や中国などの追い上げの中で、日本のものづくりは、日本のアイデンティティを今こそ見つめ直し、確立させた上で、それを基に(イタリア式のものづくりも見習いつつ)うまく世界にマーケティングブランディングしていくことにより、価値を高めていくことが重要である、ということが述べられており、非常に共感できるものがありました。
(この要約だけでは本書の内容は述べ切れていないので、ご興味ある方は実際に手にとって読んでみてください)

私は、日本には、優れた技術を有する企業・職人は数多く存在するにもかかわらず、マーケティングブランディングがうまくできていないために、(本来もっと高められるはずの)価値の創出につなげられていないのではないか、ということを常々感じているのですが、本書を読んで、改めて、自分としても、その日本のアイデンティティとポテンシャルをもっと世界にコミュニケートし、日本発のグローバル企業・製品をより活発に産み出していくことに少しでも貢献できれば、ということを感じた次第です。