The New Argonauts−Regional Advantage in a Global Economy

米国のルート128とシリコンバレーの興亡を描いた名著"Regional Advantage−Culture and Competition in Silicon Valley and Route 128"(邦訳は、「現代の二都物語―なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか」)を著した、アナリー・サクセニアンの最新作"The New Argonauts−Regional Advantage in a Global Economy"を読みました。

The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy

The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy

邦訳

最新・経済地理学

最新・経済地理学


邦訳のタイトル「最新・経済地理学」は、内容を的確に表していないので改めた方がよいのではないでしょうか。副題の「グローバル経済と地域の優位性」の方がまだ内容をきちんと表していると思います。

本書は、米国シリコンバレーの開放的なイノベーション・システムが、高学歴で起業家精神に富んだハイテク移民労働者のシリコンバレーからその出身国への「頭脳還流」と、彼らによる「アントレプレナーシップ」の広がりを通じて、台湾、イスラエル、中国、インドなどにいかに広がってきているかを著した本です。

実際、私もシリコンバレーに何度か滞在し、その地の人々と交流したことがありますが、彼の地と台湾、中国、インドとの経済的な結びつきの強さと、アジアのこれらの国と比較して日本の存在感のなさに愕然としたものです。

スタンフォード大学の理系の大学院の留学生の数をみても、中国系、インド系、韓国系などの人々に比べて日本人は圧倒的に少なく、これが日本の10年後20年後の国際的地位にどういう影響を与えるかと考えると、寂しくなってきます。

本書を読んで、改めて、イノベーション・システムのグローバル化・オープン化が進む中で、世界の中でも最も起業家精神に乏しく閉鎖的な国の一つと言われる我が国が、今後、台湾、イスラエル、中国、インドなどの国に劣らずにイノベーションを産み出し、国際的地位を維持・向上させていくためには、より一層、開放的で多様性のある地域経済システムの再構築と、人材のグローバル化アントレプレナーシップに富んだ人材育成を加速していく必要があると感じた次第です。