The Rise of the Creative Class

ずっと前から読みたいと思っていつつ、ついつい邦訳がなかったため後回しにしていた本が、ついに邦訳が出たため、やっと読むことができました。
(ちなみに、原書でも読めるぐらいの英語力は持っていますが、何せ読みたい本は他にもたくさんあって、洋書を一冊原書で読む時間がなかなかとれないので。。(と、ちょっと言い訳))

The Rise of the Creative Class: And How It's Transforming Work, Leisure, Community, and Everyday Life

The Rise of the Creative Class: And How It's Transforming Work, Leisure, Community, and Everyday Life

クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭

クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭

現代の経済におけるクリエイティブ・クラスの台頭と、それが経済に与える影響を理解するのに役立つ本です。今後の我が国・地域経済や都市のあり方、いかにクリエイティブ・クラスを惹き付ける国家・都市を創り上げていくべきか、について、問題意識をかきたてられます。

邦訳は「クリエイティブ・クラスの世紀(原題は"The Flight of the Creative Class")」の方が先に出ましたが、

クリエイティブ・クラスの世紀

クリエイティブ・クラスの世紀

もともと原書では「クリエイティブ資本論−新たな経済階級の台頭(原題は"The Rise of the Creative Class")」の方が先に刊行され、「クリエイティブ・クラスの世紀」はその続巻ですし、内容も「クリエイティブ資本論」の方が面白いので、まずは「クリエイティブ資本論」から読むのがよいでしょう(というか、こちらだけでも十分かな?)。

著者のリチャード・フロリダは、この本の中で、クリエイティブな人々が経済を牽引する現在にあっては、イノベーションと経済成長を促す場所になるためには、次の3つのTが揃った場所でなければならない、と言っています。

 Technology(技術)
 Talent(才能)
 Tolerance(寛容性)

特に興味深いのは、3番目のTolerance(寛容性)でしょう。フロリダ氏は、地域経済の成長の鍵は、世界に通用する人的環境を形成することにある、と言っています。クリエイティブな人々を惹き付ける、多様性を許容する人的環境の形成の重要性に関する指摘については、特にこうしたクリエイティブな人々が、グローバルに住む場所を選ぶ時代に入っている現代にあっては、我が国の地域経済政策や都市政策にも大きな示唆を与えるものであると言ってよいでしょう。

私もこの本の中で、米国の都市のクリエイティブ・インデックス・ランキングの上位に挙がっている都市に以前住んでいたことがあり、クリエイティブなコミュニティの存在と経済のダイナミズムとの関係を体感する機会がありましたので、この本に書いていることには納得感がありました。

スタンフォード日本センター理事の今井賢一氏も、本書に関連して、以下のような論考を述べています。
http://www.stanford-jc.or.jp/research/news-event/imai/imai040317.html

※ なお、ちなみに、この著者の最新刊では、"Who's Your City?: How the Creative Economy Is Making Where to Live the Most Important Decision of Your Life"という興味深いタイトルの本もあるのですが、海外に行ったときに書店で立ち読みしたところ、米国の都市の話がほとんどだったので、日本に住む人にとっては、読む価値はそれほど高くないような気がします(と、ちょっと立ち読みしただけで言うのもなんなのですが)。

Who's Your City?: How the Creative Economy Is Making Where to Live the Most Important Decision of Your Life

Who's Your City?: How the Creative Economy Is Making Where to Live the Most Important Decision of Your Life